寸法・注釈・レイアウト・プロット - 発行品質を左右する領域
概要
AutoCADにおける図面の「完成度」は、作図精度より注釈と出力設定で決まります。
寸法スタイル(DIMSTYLE)・文字スタイル(TEXTSTYLE)・Annotative Scale・ハッチ・レイアウト(Paper Space)・プロットスタイル(CTB/STB)・バッチプロットまでを体系的にセットアップすれば、同じ図面でも提出物の品質が大きく変わります。
> 基本編集・画層運用は02-edit-layer.md、ブロック・Xref・シートセットは03-blocks-xref.mdを参照。
1. 寸法スタイル(DIMSTYLE)
1.1 スタイル構造
DIMSTYLE(ショートカットD)は寸法に関する全ての書式をタブで分けて管理します。
| タブ | 主要設定 |
|---|---|
| Lines | 寸法線・延長線の色/太さ/オフセット |
| Symbols and Arrows | 矢じり形状・大きさ、中心マーク |
| Text | 文字スタイル・高さ・位置・整列 |
| Fit | 空間不足時のテキスト/矢印配置優先順位 |
| Primary Units | 単位・精度・接頭/接尾辞・0非表示 |
| Alternate Units | 二重寸法(例: mm/inch併記) |
| Tolerances | 公差表記方式(±, Limits, Basicなど) |
ヒント: 全スタイルを個別に作らず、Baseスタイル1つ(例: MS-3.5)を置き、尺度別・用途別の差分だけをChild Styleとして分岐させます。こうすればBase修正が子たちにCascadeで伝播します。
注意: 文字高さをDIMSTYLEで直接指定するより、参照されたTEXTSTYLE側で0にし、DIMSTYLEのText heightだけを使うのが通常安定します。2箇所で高さを決めると衝突時に原因追跡が困難です。
1.2 よく使う寸法コマンド
| コマンド | Alias | 用途 |
|---|---|---|
DIMLINEAR | DLI | 直線寸法 |
DIMALIGNED | DAL | 斜め整列寸法 |
DIMANGULAR | DAN | 角度寸法 |
DIMRADIUS | DRA | 半径 |
DIMDIAMETER | DDI | 直径 |
DIMCONTINUE | DCO | 連続寸法 |
DIMBASELINE | DBA | 基準線寸法 |
QDIM | - | 複数点の一括寸法 |
DIM | - | コンテキスト自動認識のスマート寸法(2017+) |
ヒント: DIMだけ覚えておけば、線・円弧・円のどれをクリックしても状況に合った寸法が自動生成されます。ショートカットのリズムが崩れるのを覚悟する価値があります。
2. Annotative Scale(注釈尺度)
2.1 概念
注釈の「紙面上の大きさ」(例: 3mm文字)を維持したまま、複数尺度のビューポートで同時に正しく表示されるようにするメカニズム。
寸法・文字・Multileader・ハッチ・ブロックスタイルでAnnotativeオプションをオンにできます。
2.2 使用手順
- 関連スタイルのAnnotativeチェックボックスON。
- ステータスバーAnnotation Scaleを現在ビューポートに合う値に設定(例: 1:50)。
- オブジェクト生成時に現在の尺度が自動付与。
- 同一オブジェクトを他尺度でも表示するには
OBJECTSCALEで尺度追加。 ANNOAUTOSCALE=1ならステータスバー尺度変更時、既存オブジェクトにも自動追加。ANNOALLVISIBLEで全尺度表示/現在のみ表示を切替。
ヒント: 同じ平面図を1:50・1:100の2レイアウトで発行する時、Annotativeを正しく設定すれば注釈を二重作成する必要がありません。各ビューポートが自分の尺度に合う大きさで注釈を表示します。
注意: Annotativeを全オブジェクトに無闇にオンにすると、画層・ブロック管理が複雑になり外部共有時に他の人が混乱します。単一尺度プロジェクトではDIMSCALE手動調整の方がむしろ簡潔です。
3. Multileader(マルチ引出線)
MLEADERは矢印 + 引出線 + 注釈(文字・ブロック)を1つのオブジェクトに束ねて管理します。
MLEADERSTYLE(ショートカットMLS)でAnnotative有無、Content Type(文字/ブロック/なし)、Leader形状を定義。MLEADERCOLLECT: 複数Multileaderを1本の主線にまとめる(部品番号ブロックを整理する時)。MLEADERALIGN: 水平・垂直整列。MLEADEREDIT: 引出線の枝追加/削除。
ヒント: 部品番号をCount(2022+)で自動カウントした後、ブロック型Multileaderで表記すれば、図面のリビジョンでも数量が常に一致します。
4. 文字スタイル・表
4.1 TEXTSTYLE
STYLE(ショートカットST)。フォント・高さ・横比・傾斜を定義します。
- SHX: AutoCADネイティブのベクタフォント。レンダが速く、ファイルが軽い。機械図面の国際標準は
romans.shx。 - TTF: 視覚的完成度は高いがレンダ・出力が遅い。プレゼン・マーケティング用途に適切。
- Big Font(日・中・韓): ダブルバイトSHX。日本実務では
bigfont.shx・@MS ゴシック系や社内共用SHXを使用します。
ヒント: 高さを0にすると挿入のたびに高さプロンプトが出ます。標準寸法別にTS-2.5, TS-3, TS-5のような固定高さスタイルを作っておけば、一貫性が維持されます。
4.2 TABLE
TABLESTYLE(TS)でヘッダ・データ・タイトルセルの書式を管理。- Data Link: Excelファイルを連結し外部スプレッドシート修正時に表が自動更新。
- Formula: セル内部で
=Sum(A2:A5)形式で数式使用。 - Field: ブロック属性・図面情報(ファイル名・プロット日付など)を自動参照。
DATAEXTRACTION結果を表として挿入すれば、BOM更新まで自動化可能。
5. GD&T(幾何公差)
TOLERANCEコマンドでFeature Control Frameを配置。LEADER+TOLERANCEの組合せでデータム + 公差セット表記。- DIMSTYLEのTolerancesタブは±・Limits・Basicなど寸法公差のみサポート。GD&Tフレームは別コマンド。
ヒント: ISO 1101・ASME Y14.5標準に従ってデータム記号(A・B・C)は三角形ポインタ + 文字フレームで表記。フレームフォントはromans.shxを貫くのが慣例です。
6. ハッチ・グラデーション
6.1 HATCH基本
HATCH(ショートカットH)。閉境界内部を埋めます。
- Pick Points: 内部の1点をクリック → 境界自動検出。
- Select Boundary Objects: 境界オブジェクトを直接選択(自動検出が失敗する時)。
- Patterns: Predefined(ANSI, ISO, Architectural)、User-defined(線間隔・角度)、Custom(
.patファイル)。 - Scale / Angle / Origin: パターン拡大・回転・基点。レンガ・タイルの境界をきれいにするにはOriginを角に合わせます。
- Associative: 境界変更時にハッチが自動再計算。
- Gap Tolerance (
HPGAPTOL): 境界に小さな隙間があってもハッチ可能(0〜5000)。
ヒント: メートル系図面でハッチ尺度がおかしければMEASUREMENT(0=imperial, 1=metric)から確認します。テンプレート段階で1に固定しておくのが安全です。
6.2 性能最適化
| 状況 | 対処 |
|---|---|
| パターンが密すぎて遅い | Scaleを大きくして繰返し数を減らす |
| 1つのハッチ面積が過大 | Separate Hatchesで分割 |
| 頻繁に変更されない | HATCHEDITでNon-associativeへ変換 |
| 大面積を素早く埋めたい | Solid塗りつぶしを使用 |
| ハッチがオブジェクト選択を妨げる | HATCHTOBACKでDraw Orderを後ろへ |
注意: HPMAXLINES(ハッチ最大線数)制限を超えるとハッチ生成自体が拒否されます。この警告が出ればスケールを上げるか、領域を細分化せよというシグナルです。
6.3 グラデーション・SuperHatch
GRADIENT: 2色間のグラデーション塗り。主にプレゼン・可視化用。SUPERHATCH(Express Tools): 画像・ブロック・Wipeoutをハッチパターンのように使用。建築立面の石・木テクスチャに有用。
7. レイアウト・Paper Space
7.1 Model Space vs Paper Space
- Model Space: 実寸(1:1)の幾何作図空間。
- Paper Space (Layout): 用紙単位でビューポートと注釈・タイトルブロックを配置する空間。
原則はシンプルです。幾何はモデルに、注釈・タイトル・凡例はペーパーに。
7.2 レイアウト設定手順
- レイアウトタブを右クリック →
PAGESETUP→ Page Setup Manager。 - プロッタ(実プリンタまたはPDFドライバ)を選択。
- 用紙サイズ(A1/A3など)・方向・プロット領域・プロットスタイルテーブル(CTB/STB)・プロット尺度(通常1:1)を指定。
- New Layout from Templateで会社標準レイアウトを呼び出し。
ヒント: Sheet Setを使う計画なら1 DWG = 1 Layout原則を守るのが管理上有利です。
7.3 ビューポート(Viewport)
Paper spaceでMVIEW(ショートカットMV)またはリボン → Viewport。
- 矩形: 2点指定。
- 多角形:
MVIEW→P(Polygonal)。 - オブジェクトベース: 閉ポリライン選択 → その形のビューポート。
VPCLIP: 既存ビューポート境界の再指定。- ビューポートをダブルクリックまたは
MSPACEでビューポート内部に入り、PSPACEで復帰。
ビューポート尺度固定: ビューポート選択 → Properties → Display Locked = Yes。ホイールスクロールで尺度が乱れる事故を防ぎます。
ヒント: ビューポート内で特定画層だけVP Freezeすれば、同じモデルを複数ビューポートで違う情報のみ露出できます。建築の平面・天井伏図の区分が代表例です。
7.4 尺度・尺度管理
一般メートル尺度: 1:1, 1:2, 1:5, 1:10, 1:20, 1:25, 1:50, 1:100, 1:200, 1:500, 1:1000, 1:2000.
SCALELISTEDITでドロップダウンの尺度リストを整理すれば、誤って非標準尺度を選ぶ事故を減らせます。
8. プロットスタイルテーブル(CTB/STB)
8.1 CTB (Color-dependent)
- 色1〜255とTrueColorそれぞれに線の太さ・色・スクリーンパーセントをマッピング。
- 長所: 画面の色だけで出力結果を予測できる。シンプル。
- 短所: 同じ色を共有する複数オブジェクトを別々に出力できない。
8.2 STB (Named)
- 名前ベーススタイル(
Thin,Medium,Thick…)を画層・オブジェクトに個別指定。 - 長所: 柔軟。大規模組織・マルチディシプリンプロジェクトに適切。
- 短所: 切替管理が複雑。図面間でスタイル名が食い違うと混乱。
切替: 1つの図面はCTBまたはSTBのどちらか一方のみを使用。CONVERTPSTYLESで相互変換。
ヒント: 日本・米国の大半の実務は依然CTBベースです。標準を変える特別な動機がなければCTBを維持するのが安全。新規大規模組織で白紙から始めるならSTBを検討する価値があります。
9. 出力 — PLOT・PUBLISH・PDF
9.1 PLOTダイアログの核心
PLOT(Ctrl+P)。
| フィールド | チェックポイント |
|---|---|
| Printer/Plotter | 実プリンタまたはDWG to PDF.pc3 |
| Paper Size | A1/A3/A4/ANSI Dなど |
| Plot Area | Layout・Extents・Display・Window |
| Plot Offset | Center on paper推奨 |
| Plot Scale | 通常1:1(レイアウト基準) |
| Plot Style Table | CTB/STBファイル指定 |
| Plot Options | Lineweights, Transparency, Plot stamp, Save changes to layout |
| Orientation | Portrait / Landscape |
ヒント: BACKGROUNDPLOT=2にしておけばプロット中も作業可能。ただし大量PUBLISH時は0にする方が安定します。
9.2 DWG to PDF.pc3の詳細
内蔵PDFドライバのPC3編集で重要なオプション:
- Vector quality: 600〜1200 dpi推奨。それ以上はファイルが肥大化するだけ。
- Raster quality: 画像・レンダ部分のdpi。
- Merge control: 線が重なる時にMerge(色混合) vs Overwrite(上位優先)。
- TrueType as Text: チェックするとPDFでテキスト検索・コピー可能。解除すると形状が完全保存されるが検索不可。
- Include Layer Information: PDFレイヤーに変換してビューアでon/off制御可能(ファイル容量↑)。
- Include Hyperlinks。
9.3 PUBLISH(バッチプロット)
PUBLISHは複数DWG・レイアウトを一度にプロットします。
- 出力: Plotter named in page setup(各シート固有設定)またはPDF/DWF/DWFx。
- Multi-sheet PDF: 1つのPDFに複数シートをまとめる。
- DSD(Drawing Set Description)ファイルでセット構成を保存して再利用。
- Sheet Set ManagerのPublishがシート番号・順序管理で最も安定。
注意: PUBLISHは各レイアウトのPage Setupをそのまま使います。一つ二つのシートだけ設定が誤っていてもPDF結果が混ざって出るので、Publish直前に全レイアウトのPage Setup Managerを点検する習慣が必要です。
9.4 プロットスタンプ
PLOTSTAMPでファイル名・パス・日付・ユーザ・図面番号を図面下部に自動印刷。外部提出・記録管理に有用です。
10. プロット前の品質点検フロー
PREVIEWで用紙境界の侵入有無を確認。- ライン太さ・色がプロットスタイルと一致するか。
- 注釈尺度(Annotation Scale)がビューポート尺度と一致するか。
- Xrefが全てロード状態か(壊れた矩形マーカーがないか)。
- SHX・TTFフォント欠落警告がないか。
- 寸法テキストが線と重なっていないか。
- Draft PDFを先に低解像度で出して、相互チェック後に最終出力。
11. 実務チェックリスト
- Base DIMSTYLE + Child構造で寸法スタイルが管理されている
- 文字スタイルはSHX(機械)または標準TTFに固定されている
- Annotative使用有無がプロジェクト単位で統一されている
- ハッチ尺度が図面全般で一貫している
-
HPGAPTOLで境界の小さな隙間を許容した(必要時) - ビューポートDisplay Lockがかかっている
- ビューポート別の画層VP Freezeが意図通り設定されている
- Page Setupが全レイアウトに指定されている
- CTB/STBファイルがプロジェクト標準フォルダにある
- DWG to PDF.pc3が社内標準品質(dpi, Layer, TTF as Text)で保存されている
- PUBLISH前に
PREVIEWまたはDraft PDFで相互チェックした -
PLOTSTAMPで発行情報が自動印刷される