SolidWorks 図面(Drawing)・GD&T・BOM・eDrawings

SolidWorks · Drawing

概要

3Dモデルがどれほど完璧でも、製造現場は図面1枚を見て加工する。SolidWorks図面(.slddrw)はパート/アセンブリと双方向に連動するパラメトリック図面で、モデルが変わればビューと寸法が自動更新される。

ただし、テンプレート・ビュー構成・寸法管理・GD&T・BOM・Balloonの基礎が固まっていないと図面はすぐに混乱する。

本書は図面テンプレート設定から各種ビュー、Hole Callout、GD&T、BOM・Balloon・Block、eDrawings/xDesignによる外部共有まで実務基準で整理する。ショートカットは01-shortcuts-ui.md、パートモデリング基盤は02-part-modeling.mdを参考のこと。

1. 図面テンプレート — .drwdotと.slddrt

SolidWorks図面ドキュメントは2つのファイルに分かれる。この概念を区別しないと、テンプレート管理は常に混乱する。

ファイル役割
.drwdot図面テンプレート。文書全体の設定(単位・規格・レイヤー・注記既定値)を含む。
.slddrtSheet Format(シート様式)。枠・表題欄・改訂ブロックの2D図形。

メニュー経路: Tools → Options → Document Properties → Drafting StandardでISO, ANSI, KS, JISから選択。以降Dimensions, Notes, Arrows, Line Font項目がその標準に合わせて一括設定される。

表題欄の自動化: Sheet Formatのテキストフィールドに$PRPSHEET:{Description}のようなリンク式を埋め込んでおくと、各ビューが参照するパートのCustom Propertyを読み、表題欄が自動で埋まる。

会社ロゴ・プロジェクト番号・材料・重量・図面番号・作成者・改訂番号まで一度に連動できる。

ヒント: 会社標準のSheet Formatは必ずネットワークパスに共用配布すること。エンジニアごとに個人フォルダに保管すると改訂ブロックの様式が少しずつ異なるようになり、PDF配布時に「図面ごとに表題欄が違う」事故が繰り返される。

2. 図面ビューの種類

ビューは一度に複数作れるが、実務では正面+必要な補助ビュー2~3個が最も一般的な構成。

ビュー用途
Standard 3 View正面・平面・側面を自動生成。初稿作成時の基本。
Model View任意方向のビューを手動配置。
Projected View既存ビューから直交投影(上/下/左/右)。
Auxiliary View傾斜面を垂直に投影。傾斜面寸法の表記用。
Section View断面ビュー。Full / Half / Aligned / Offset / Broken-outなど。
Detail View円・矩形の境界で局所拡大。狭い領域の寸法を分離表記。
Broken View長い部品(シャフト・プロファイル)の中間を省略してスケールを節約。
Crop View必要領域のみ残して周囲をカット。
Alternate Position View同一ビューに機構の別姿勢をゴーストで重ね合わせ。
Exploded Viewアセンブリ分解図。BOM・Balloonとともに組立図に使用。

メニュー経路例: Insert → Drawing View → Section。

ヒント: Section ViewはAligned(整列断面) を覚えておくと、回転対称部品(フランジ・ギヤハウジング)の断面を歪みなく展開できる。ボルト穴が円周上に不規則配置されたフランジもすべて1つの断面に投影できる。

注意: Detail Viewの倍率はシート倍率と独立で設定可能。既定シートが1:2でDetailだけ2:1にすると、寸法文字サイズが変わるので、図面表題欄の"SCALE"表記と視覚的サイズがずれないよう注記を明示する必要がある。

3. Hole Callout — 穴注記

Hole Wizardで作った穴は自動的に正確なコールアウトが生成される。貫通穴は⌀5 THRU、タップ穴はM8x1.25、カウンターボアは⌀8.5 THRU ⌵ ⌀14 ⌴ 5の形式で表記される。

メニュー経路: Annotation → Hole Callout → 図面上の円(穴)を選択。

  • 2020以降のバージョンは、Section View内部の穴にも直接Hole Calloutを付けられる。
  • Legacy Hole(手動Extrude Cutで作った穴)はコールアウトが正確でないことがある。可能ならHole Wizardで作り直す。
  • Advanced Hole(層ごとに異なる直径の穴)は1行コールアウトが複数行に展開され、深さごとに寸法を並べる。

ヒント: コールアウトテキストの前後に会社固有シンボル(⌀の代わりにφ、深さ記号▽など)を追加したい場合はテキストボックスで直接入力する。元のパラメトリック寸法は保たれるので、モデルが変わっても値は自動更新される。

4. 寸法(Dimensions) — Primary / Secondary

図面寸法は2つの出所に分かれる。概念を混ぜるとモデル修正時に寸法が消えたり誤反映する。

種類生成方法削除時の影響
Primary(モデル所有)Insert → Model Itemsでフィーチャー寸法を自動取得モデル側のフィーチャー寸法削除時に図面からも消える
Secondary(図面専用)Smart Dimensionで手動記入図面のみに存在、モデルには影響なし

その他の寸法方式:

  • Ordinate Dimension: 1つの基準線から累積距離を表記。CNC加工の基準線と直結。
  • Chain Dimension: 連続寸法を自動。
  • Baseline Dimension: 1つの基準からすべての寸法線を分岐。

注意: Model Itemsで取得した寸法を削除するときは慎重に。フィーチャー寸法そのものが消えると、後で「なぜ図面に寸法がないんだ」と手動で入れ直す作業を繰り返すことになる。代替としてHide(非表示)を使えば、モデル寸法を維持したまま図面上だけ視覚的に隠せる。

5. GD&T — 幾何公差

メニュー経路: Annotation → Geometric Tolerance。

  • Datum Feature Symbol: データムA, B, Cなどをエッジ・軸に付与。
  • Feature Control Frame: 記号(位置度⌖、平面度▱、平行度∥など)+ 公差値 + データムの組合せ。
  • MBD(Model Based Definition) ライセンスがあれば、3Dモデル自体にPMI(Product Manufacturing Information)を直接付与し、図面なしで製造情報を伝えられる(航空・自動車・MIL環境で採用進行中)。

実務上の注意: GD&Tは表記を覚えたら終わりではなく、検査方法(CMM, ゲージR&R) まで含めて考える必要がある。位置度0.05のような値は測定可能性・測定コストに大きな差をもたらす。図面リリース前に品質チームとレビューする流れを推奨する。

6. BOM(Bill of Materials)

メニュー経路: Table → Bill of Materials。

BOMの種類:

  • Top-Level Only: 最上位コンポーネントのみ — 商業供給単位の管理向け。
  • Parts Only: すべてのパート(アセンブリ単位を除外) — 製造用素材の集計向け。
  • Indented: 階層ごとにインデント — 組立順に沿う「設計BOM」。

列は自由に追加できる。既定ではItem No., Part Number, Description, Quantityが入り、実務ではここにMaterial, Weight, 表面処理, 仕入先, 納期などのCustom Propertyを併記するのが一般的。

ヒント: Part Number列は"Document Name"ではなくCustom Property基準にするのが標準。ファイル名変更が多くてもBOMの部品番号は固定される。

ヒント: Part Number displayed when used in a bill of materialsオプション(パートConfiguration Properties)を設定すると、同じパートの異なるConfigurationがBOMで異なる番号で拾われる。規格品が長さ・直径別に分かれるときに便利。

7. BalloonとMagnetic Lines

Balloonはビュー上の部品を指し示し、BOMアイテム番号を円・四角形の記号でつなぐ。

  • Auto Balloon: ビュー全体に円形・矩形・Squareパターンで一括自動配置。
  • Stacked Balloon: 複数番号を縦・横に積んで表記。ボルト+ワッシャー+ナットのように1箇所に複数部品が集まるとき。
  • Magnetic Lines: Balloonを磁石のように整列させる仮想線。Auto Balloonがでこぼこしているときに線上へドラッグすると一括整列する。

ヒント: アセンブリにWeldment Cut Listがある場合、Balloonの基準番号をCut List Item番号に指定できる。構造物図面での溶接部材別Balloon + Cut List表の組合せはほぼ標準。

8. Block — 再利用可能な2D記号

よく使う2D記号(溶接記号、表面粗さ、ベンドシンボル、センターマークの変形、会社ロゴなど)はBlockとして保存して繰り返し使う。

  • 位置: Design Library → Annotationsフォルダ。
  • カスタムBlock作成: スケッチ → Tools → Block → Make → .sldblkで保存。

Blockは内部に属性(Attribute)を持てるので、同一Blockを複数回挿入しながら参照番号や数値だけ変えて打つやり方も可能。

9. 図面の公差・注記・シートレイアウト

9.1 公差表記

  • 一般公差(General Tolerance): シートのNote Blockに「未記載公差はKS B ISO 2768-1中級適用」のように一括表記。個別寸法に公差を毎回書かずに済み、図面の可読性が上がる。
  • 寸法公差(Dimension Tolerance): 寸法を選択 → PropertyManagerのTolerance/PrecisionセクションでBilateral, Symmetric, Limit, Basic, Min/Maxから選択。
  • はめあい公差(Fit): ISO Fitシステム(H7/h6など)をSmart Dimension PropertyManagerで直接指定。穴/軸モードのトグルで設定。

ヒント: よく使う公差スタイルはFavoritesに事前保存しておくと、同じ公差を繰り返し入力せずに済む。

9.2 注記(Note)とSymbol

  • Note: 一般テキスト。$PRPSHEET:{属性}形式でモデル属性値を自動挿入可能。
  • Surface Finish Symbol: Ra/Rz値表記。矢印/線と自動整列。
  • Weld Symbol: 溶接記号。AWS/ISOから標準選択。
  • Datum Target: 点・線・面のデータム指定。
  • Center Mark / Centerline: 穴・円に自動挿入(オプションで全ビュー一括追加)。

9.3 レイヤー(Layer)活用

メニュー: Tools → Options → Document Properties → Line Fontまたは図面レイヤーツールバー。

  • 寸法・注記・中心線・ハッチング・外形線をそれぞれのレイヤーに配置。
  • レイヤーごとに色・線の太さ・線種・印刷可否を一括制御。
  • 例: DIMレイヤー黒0.25mm、NOTEレイヤー青0.18mm、HIDDENレイヤーグレー点線。

ヒント: PDF出力時にレイヤーがPDF Layerとして保たれるので、受信者はAcrobatでレイヤーごとに表示を切り替えられる。

10. 図面仕上げのベストプラクティス

  1. Sheet Formatを会社単位で標準化。ロゴ、表題欄、改訂ブロック、注記テキストすべてを整列。
  2. Layer活用。寸法・注記・中心線・ハッチングをレイヤーで分けて色・線の太さを一括制御。
  3. Drawing View Lock。誤ってビューが動くと寸法レイアウトが崩れる。ビュー右クリック → Lock View Position。
  4. Tangent Edgesは既定でVisibleだと過度に複雑になる。図面の既定値をRemovedかWith Font(細い点線)に変えておく。
  5. Auto-dimensioningを信用しすぎない。自動寸法は重要寸法を頻繁に見落とす。リリース前にすべての寸法を手動検査。
  6. Revision Tableの自動化。PDM Workflow TransitionでRevisionが変わるときに図面のRevision Tableに行が自動追加されるよう連動。
  7. PDF出力前にAnchor Pointを確認。Balloon・BOM・Revision Tableの基準点がシート外にはみ出していると、表が崩れた状態で印刷される。

11. eDrawings — 外部共有用の軽量フォーマット

顧客・協力会社・営業がSolidWorksなしでも3Dモデルと図面を確認できる公式ビューア。無料でWindows/macOS/iOS/Androidすべてに対応。

ファイルフォーマット:

  • .eprt — パートeDrawing。
  • .easm — アセンブリeDrawing。
  • .edrw — 図面eDrawing。

機能:

  • eDrawings Viewer(無料): 計測、断面、背景変更、Exploded View再生。
  • eDrawings Professional(有料): マークアップ・注釈、アニメーション録画、STL/3MF/AR出力。

SolidWorksからはFile → Publish to eDrawingsで書き出せ、このときパスワード・有効期限・計測可否を設定してIPを保護する。協力会社見積もり用サンプル共有に多用される。

ヒント: STEPの代わりにeDrawingsで共有するとサイズが1/5~1/10に減りながらも寸法・注記情報は残る。設計レビュー用の共有に最適。

12. xDesignと3DEXPERIENCE Works

最近Dassault Systèmesが推進するブラウザベースCADの流れ。従来のデスクトップSolidWorksと併用するケースが増えている。

  • xDesign: インストール不要でChrome/Edge/Safariで実行。iPad一部対応。AIベースの自動Mate提案、History-freeとParametricの両対応。
  • 3DEXPERIENCE Works: クラウドプラットフォーム。デスクトップSolidWorksと同期し、Simulation、Manufacturing、AI Copilotモジュールを追加可能。
  • AR/VR統合: Apple Vision Pro、Microsoft HoloLens、iOS eDrawings ARモードで実空間にモデルを配置してレビュー。

国内中小製造業にとって当面の主力ツールではないが、リモートレビュー・営業デモ用途ではeDrawings + xDesignの組み合わせが実用的。

13. よくあるミスとチェックポイント

症状原因対処
図面がモデル変更を反映しない参照ファイルパスの変更、ファイル移動File → Find ReferencesまたはPDM Check-In
Model Items寸法が重複表示複数ビューに同じフィーチャー寸法が自動配置不要な寸法はHideまたは削除
Auto Balloonがビュー外にはみ出すビュー倍率に比して番号パターンが広いMagnetic Lineで再整列、ビュー拡大
PDF品質がぼけるDraftSightの既定DPIが低いPrint → Options → High Quality+300 DPI
日本語注記の文字化けテンプレートフォントが日本語非対応図面NoteフォントをMeiryo・Noto Sansなどに統一

実務チェックリスト

  • .slddrt Sheet Formatを会社標準に統一したか
  • Drafting Standard(ISO/ANSI/KS)が図面間で一貫しているか
  • Model Itemsで取得した寸法とSmart Dimensionが混在していないか
  • 必要なビューがすべて揃っているか(必要に応じSection/Detail/Broken)、倍率表記は正しいか
  • Hole CalloutがHole Wizard原本と一致しているか
  • GD&T記号とデータムが品質検査方法と整合しているか
  • BOM Part NumberはCustom Property基準か(ファイル名依存なし)
  • BalloonがMagnetic Lineで整列されているか
  • すべてのビューにLock View Positionを適用したか
  • Revision TableがWorkflowと連動するか
  • 表題欄の$PRPSHEETリンクが切れていないか
  • PDF 300 DPI出力テストが完了したか
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