Siemens NX Drafting・PMI・MBD 完全ガイド

NX · Drafting & PMI

概要

Siemens NX のドキュメント化パイプラインは 2D Drafting と 3D PMI(Product Manufacturing Information)の 2 軸で設計されている。

Drafting は ISO・ANSI・JIS・DIN・GB・ESKD 規格に準拠した従来型図面を、PMI は ASME Y14.41 ベースの Model-Based Definition(MBD) を実現する。

本ページは Base/Projected/Section/Detail ビュー生成 と寸法・GD&T 作業から、PMI を Model View に配置 して下流工程(CMM・CAM)で 自動消費 する MBD ワークフローまでを扱う。

ドローイング環境への移行ショートカット Ctrl+Shift+D とアプリケーション切替は 01-shortcuts-ui.md を参照。

Drafting 環境への移行とシート設定

Drafting アプリケーションは Application → Drafting または Ctrl+Shift+D で開く。

NX の図面は別の .drw ファイルではなく 同一の .prt 内に Drawing Sheet として含める か、部品を参照する専用ドローイングパート({partname}_dwg.prt)として 分離 する。組織標準に従って選択する。

シート規格と Drafting Standard

New Drawing Sheet ダイアログで選択するオプションは以下の通り。

項目値
用紙規格A0~A4、B、C、D、E、ANSI、ISO、JIS
Drafting StandardISO、ANSI、JIS、DIN、GB、ESKD
Template社内タイトルブロック・ロゴを含むカスタムテンプレート
Scale1:1、1:2、1:5 などの基本縮尺

Drafting Standard により 矢印形状、デフォルト公差、寸法配置ルール、単位表記方式 が変わる。

日本の製造現場は JIS または ISO を主に使用し、米国系 OEM は ANSI、ロシア・CIS 地域は ESKD を使う。

> ヒント: 社内タイトルブロックを毎回描かず、UGII_DRAFTING_TEMPLATE_DIR に登録した テンプレートパートに予め入れておけば New Drawing 時に自動適用される。

Drawing View(ビュー)体系

Base View と Projected View

  • Base View: 図面に最初に配置する 基準ビュー。Model View(Front、Top、Right、Iso など)を選択する。
  • Projected View: Base View からドラッグで 直交投影 を生成する。左右上下 4 方向と Iso ビューを自由に抽出できる。

Section View と Detail View

断面図・部分拡大図 は現場で最も頻繁に使われる補助ビューである。

ビュータイプ説明
Simple Section直線断面
Stepped Section複数回折れ曲がる階段型断面
Revolved Section回転型断面(円形部品)
Aligned Section異なる角度の断面を一平面に展開
Half Section半分のみ切断
Broken-out Section局部のみを切開
Detail View円形・矩形・Custom 境界による部分拡大
Broken View長尺部品の中間を省略表示
Auxiliary View傾斜面法線方向のビュー
Overlay View2 状態を重ねて比較(組立前後、展開/折畳)

NX 11 以降 Section Line 自体を スケッチで定義 でき、非定型断面図も スケッチ修正のみで更新 される。

> 注意: Detail View の スケールを上位ビューのスケールと別に設定することを忘れないこと。NX は自動推論するが、寸法表記エラー を避けるため Detail View Preferences で Scale を明示的に指定する。

Dimension(図面寸法)

  • Rapid Dimension: オブジェクトをクリックすると タイプを自動判別 する(線形/角度/半径)。
  • Linear、Angular、Radial、Diameter、Ordinate(原点基準)、Chain、Baseline など従来型タイプをすべて対応。
  • Auto Dimension: ビューに含まれるスケッチ寸法を 自動で取り込み配置。半自動寸法作業に有用。
  • Dimension Style: 矢印形状、補助線ギャップ、テキスト位置など詳細書式を管理。

GD&T / Feature Control Frame

GD&T は ASME Y14.5(米国)と ISO 1101(国際)の両体系に対応。

Feature Control Frame(FCF) に入る公差タイプは次の通り。

範疇項目
形状公差Flatness、Straightness、Circularity、Cylindricity
姿勢公差Perpendicularity、Parallelism、Angularity
位置公差Position、Concentricity、Symmetry
輪郭公差Profile of Line、Profile of Surface
振れ公差Circular Runout、Total Runout

Modifier は MMC(Ⓜ)、LMC(Ⓛ)、RFS、Free State(Ⓕ)、Projected(Ⓟ)、Tangent Plane(Ⓣ) などに対応し、Datum Feature Symbol と Datum Target をあわせて作成できる。

Symbols & Notes

  • Surface Finish: ISO 1302 / ASME Y14.36 記号
  • Weld Symbol: ISO 2553 / AWS A2.4
  • Note / Label / Balloon: 自由注記とバルーン
  • Parts List(BOM Table): アセンブリドローイング専用。コンポーネントの Item ID・数量・材質が自動集計 され、ビューのバルーンが同一番号でリンクされる。
  • Hole Callout: フィーチャーから穴パラメータを読み取り ⌀6.5 THRU, ⌴⌀11 ▽5.5 のような 標準テキストを自動生成。

Flat Pattern Drawing

板金パートでは Insert → View → Flat Pattern View で 展開ビュー を自動生成する。

Bend Line と Bend Note(UP/DOWN、R、角度)が図面に自動付与され、別途の Bend Table も挿入可能で、実務では ブランクサイズ確認・レーザー加工入力用 として必須。

> ヒント: Flat Pattern が更新されない時は View → Update Views を手動で実行する。ベンド半径を変更したのにブランクサイズがそのままなら、十中八九ビューアップデートが遅延している。

ドローイング自動化とテンプレート

  • Drawing Template(.prt): タイトルブロック、標準ビュー配置、社内ロゴを予め含むテンプレート。New Drawing 時にこのテンプレートから出発する。
  • Part Family Drawings: Part Family 1 つに 1 つのドローイングのみ 作っておけば、サイズ別の同一図面が 自動再生成 される。
  • Drafting Preferences / Object Preferences: 組織標準を .nxd ファイルとして管理して配布。
  • Retained Annotations: ビューを削除して再作成しても 以前の寸法が新ビューに自動再接続 される。

ドローイング実務 Tip

  • レイヤー分離: 寸法・注記・中心線・ハッチをそれぞれ別レイヤーに分け、レビュー時にレイヤートグルで 表示情報を単純化 する。
  • 複雑な断面は Section Line をスケッチで定義 し、後の修正を容易にする。
  • 3D PMI がある場合 Inherit PMI オプションでドローイングビューに自動継承し、MBD→2D 遷移 を滑らかにする。
  • Teamcenter 環境では ドローイング編集前に必ず Check Out を行う。リビジョンの混乱 を防ぐ基本規律。
  • 部品番号・タイトルブロックは Expression で埋め Part Family と同期。

Drawing View のプロパティと表現制御

各 Drawing View は 独立したプロパティ を持つ。右クリック → Settings で以下の項目を調整する。

項目内容
Scaleビュー縮尺(上位ビューと独立)
Reference Setどの Reference Set で表示するか
Hidden Lines隠線表示可否・線スタイル
Smooth Edges接線エッジ表示可否
Threadsねじ表記方式(Simplified/Symbolic/Detailed)
Centerlines自動中心線生成
Section Line Appearance断面線太さ・矢印サイズ

現場で最も見落とされがちなのが Thread 表記方式 である。社内標準が Simplified か Symbolic か を Template にプリセットしておかなければ、ビューごとに表記が変わる。

View Dependent Edit

特定のビューでのみ エッジを隠す/ハイライトしたい時に使用。モデルに手を加えず ビュー次元でのみ編集が適用されるため、他ビューには影響しない。

組立図で後方部品のエッジを視覚的に隠す場合 に有用。

Drawing Revision Control

図面 Revision を管理する 3 軸:

  1. Revision Block: タイトルブロック横の Revision 表(ECO 番号・日付・作成者)。
  2. Revision Clouds: 変更領域を雲形で強調。
  3. Balloons / Delta Symbols: Δ1、Δ2 記号 で変更箇所を表示。

Teamcenter 環境では Item Revision が上がるとドローイング Revision も自動で増加 し、Structure Manager でどの Revision がどのアセンブリに紐付くか追跡できる。

PMI 概要

PMI(Product Manufacturing Information) は 製造・検査・組立に必要な寸法・公差・注記情報 を 3D モデルに直接埋め込む 機能である。

究極の目標は 2D 図面なしで 3D のみで製品定義を完結する MBD(Model-Based Definition) であり、ASME Y14.41 / ISO 16792 がその標準。

PMI の構成要素

  • 寸法(Dimension): Linear、Angular、Radial、Diameter
  • Feature Control Frame(幾何公差)
  • Datum Feature、Datum Target
  • Surface Finish
  • Weld Symbol
  • Note / Callout
  • Material Specification
  • Custom Symbol

Model View と PMI 配置

PMI を空間に無造作に置くと互いに重なって読みにくくなる。NX は Model View という概念で PMI をグループ化 する。

  • Menu → View → Operation → New Model View でビュー生成
  • ビュー名、視点(Orientation)、Visible Object 集合 を指定
  • ビューごとに 表示する PMI セット を別設定

自動車・航空現場でよく使われる命名規則は MV-INSPECTION(検査用)、MV-ASSY-TOP(組立上位)、MV-MACHINING-OP10(加工工程別)のように 工程ベース で命名する方式である。

PMI 生成

Menu → Insert → Annotation → Dimension で Mode を 3D(PMI) にして寸法を打つと 該当 Model View に保存 される。

Annotation Plane は寸法が配置される平面で、通常 Model Plane が自動選択 されるが必要に応じて手動指定する。

Semantic PMI

単なる視覚的表示を超え、GD&T の Datum–Tolerance 関係がマシンリーダブル(machine-readable) として保存された PMI を Semantic PMI と呼ぶ。Semantic PMI は 下流プロセスで自動的に消費 される。

  • CMM 検査プログラム自動生成(Siemens Quality Planner、Mitutoyo MCOSMOS+ など)
  • CAM が 公差情報を読んで加工戦略・工具選定を調整
  • 3D XML、JT、STEP AP242 で Export 時に PMI がともに伝送され、サプライチェーンで共有

> ヒント: PMI が 視覚的(graphic-only)にのみ 作成されると CMM 自動プログラムが読み取れない。Tolerance Type を明示し Datum 参照を必ず指定 してこそ Semantic レベルとなる。

MBD ワークフロー

  1. 3D モデルを完成 させる。
  2. PMI ですべての寸法・公差・注記を 3D に直接配置 する。
  3. 用途別の Model View を複数作成(検査用、組立用、加工用)。
  4. Teamcenter または JT で下流システムに伝達(図面なし)。
  5. CMM が PMI を読んで検査プログラムを自動生成。
  6. CAM が PMI 公差を基に加工戦略を自動選定。

MBD の中核的利点は Single Source of Truth: 図面解釈エラーが無く、国際協業で言語・表記差による混乱 が減り、検査と加工が自動化される。

航空 FAA/EASA 規定 で ASME Y14.41 が正式に認められて以来、航空部品は事実上 MBD が標準 である。

PMI 実務 Tip

  • 組織別 PMI 標準(ASME Y14.41 または ISO 16792)の遵守可否を文書化する。
  • Model View の名前は 工程ベース で付ける(MV-FINAL-INSPECTION、MV-ASSY-STEP1)。
  • PMI の色は デフォルト青を維持 し、特殊公差のみ赤 で表示するのが現場慣行。
  • 一つのビューに PMI を詰め込みすぎる とモデルが混雑する。ビュー別にフィルタリングする。
  • Display Instances: パターンフィーチャー一つのみに PMI を付け、残りは 「反復インスタンス表示」 オプションで自動伝播。
  • PMI の位置はドローイングレビューのように慎重に。3D での可読性はカメラ角度に大きく依存 する。

> 注意: PMI はモデル修正時に自動更新されるが、Face が削除されて参照が切れると壊れた状態で残る。定期的に Check for Broken PMI ユーティリティを実行して 整合性を点検 する。

PMI と Drafting の並行運用

多くの組織は 2D 図面を一度に完全には捨てられない。現実的な移行経路:

  1. Phase 1: 2D 図面主導、PMI は参考情報としてのみ追加
  2. Phase 2: PMI が Single Source of Truth、2D は PMI Inherit で自動生成
  3. Phase 3: 2D 図面廃止、MBD のみ流通

Phase 2 で Drafting の Inherit PMI オプションを活用すれば、3D に配置した PMI が該当ビューに自動表示 される。寸法を 2 度入力しなくて済む のが大きな利点である。

Drafting・PMI 共通 Tip

  • 矢印・テキストサイズは Drafting Standard に従属 するので、社内標準で上書きするには .nxd Preferences ファイルで管理する。
  • 組立ドローイングの Parts List は Include/Exclude フィルタ を入念に設定する。標準部品(ボルト)はグループ集計、特殊部品は個別項目 に分けるのが一般的。
  • Title Block の Item ID・Revision・Date フィールド を Attribute 参照 で連結し手入力を無くす。
  • 検図用の色規則: 変更部位は赤、参考注記は緑、寸法は青 が代表的慣行。

現場移行事例

国内完成車 OEM の一部は Powertrain 部門で既に Phase 3(2D 廃止)に到達 しており、ボディ/シャシー部門は Phase 2 に留まっている。

協力会社に対しては JT + PMI パッケージを基本として伝達 し、必要時に PDF 図面を補助添付する方式が広がっている。

航空分野 は FAA/EASA の MBD 認定以降、Phase 3 移行速度が最も速い。Boeing 787、Airbus A350 以降 PMI 中心データパッケージ がサプライチェーンで事実上標準化された。

実務チェックリスト

  • Drafting Standard がチーム標準(ISO/JIS/ANSI など)に設定されているか確認
  • タイトルブロックの Expression が Item ID・Revision と連動して自動更新されるか検証
  • Section Line をスケッチベースで作成し修正可能性を確保
  • Detail View Scale が上位ビューと異なる場合は明示的に指定
  • GD&T は Datum Feature Symbol → Datum Reference → FCF の順で一貫して配置
  • Parts List のバルーン番号と BOM テーブル番号が一致するか確認
  • Flat Pattern View は設計変更後に View Update を実行してブランクサイズを確認
  • PMI Model View 名が工程ベースで標準化されていること
  • Semantic PMI として作成され CMM・CAM で自動消費可能か検証
  • JT/STEP AP242 Export 時に PMI が正常伝達されるかサンプルテスト

PDF / 2D DWG Export

MBD がどれほど進展しても 外部サプライチェーンとやり取りする段階 では依然として 2D PDF・DWG が要求される。NX は次の Export 経路を提供する。

  • PDF: File → Export → PDF。シート別生成、3D PDF(U3D 内蔵) でモデル自体を書き出すことも可能
  • DWG/DXF: Drafting ビューを AutoCAD 互換レイヤー に変換。Drawing Standard に応じて線種・寸法表記がマッピングされる
  • 3D PDF with PMI: PMI を保持したまま 3D PDF を生成、外部ビューアが CAD 無しでも PMI を回転・確認可能

> ヒント: 協力会社伝達用 PDF は Adobe 標準フォント(Helvetica、Times) に変換しなければ他 PC で レイアウトが崩れる。NX 内部フォントをそのまま埋め込むと ファイルサイズが不必要に肥大化 する。

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