SolidWorks アセンブリ・Mate・Configuration・パフォーマンス最適化
概要
アセンブリはSolidWorksの中で最も「壊れやすい」領域だ。Mateが数十個絡み合い、Sub-Assemblyが入れ子になると、パート1個のフィーチャー修正のためにアセンブリ全体のリビルドが数分かかることもある。
本書はMateの3大カテゴリ、Sub-Assemblyの構造、Configuration・Design Tableを用いたバリエーション管理、そして大型アセンブリのパフォーマンスを実際に体感できる速度まで引き上げるLightweight/SpeedPak/Large Assembly Mode戦略を整理する。
1. Mate — 3大カテゴリ
1.1 Standard Mates
もっとも頻繁に使う基本拘束。
- Coincident: 点-線-平面の一致。頻度1位。
- Parallel / Perpendicular
- Tangent: 円筒-平面、円筒-円筒の接線。
- Concentric: 円筒軸の整列(ボルト・シャフト)。
- Lock: 相対位置を完全固定。
- Distance: 数値指定。スライダーでスイープして動作検証。
- Angle
1.2 Advanced Mates
標準Mateでは解きづらい状況に使う。
- Profile Center: 矩形・楕円プロファイルの中心を整列。
- Symmetric: 対称平面基準で2点/面を配置。
- Width: 2面の間の中央または特定位置。
- Path Mate: 点が曲線経路に沿って移動。コンベヤ・レール・チェーンモデリングの基本。
- Linear/Linear Coupler: 2つのコンポーネントの変位を比率で連動。
- Distance/Angle Limit: 最小・最大範囲を指定。シリンダーストローク・関節の限界表現。
1.3 Mechanical Mates
実際の機械機構を単純化して表現する。
- Cam: カムプロファイルにフォロワーが追従。
- Slot: スロット内部の移動。
- Hinge: Concentric + Coincidentの組み合わせ + 角度リミット。
- Gear: 歯車比設定、Internal/External。
- Rack and Pinion: 直線-回転変換。
- Screw: ピッチ指定、ネジ回転-直進変換。
- Universal Joint: 2軸ジョイント。
1.4 Mateのベストプラクティス
- 平面-平面Mate優先。エッジ・フィレットエッジにMateをかけると、上位パート修正時に壊れる。Front/Top/Rightなどの基本平面が最も安定。
- Mateの数は最小限に。過剰なMateはコンフリクトの元凶。
- 最初のコンポーネントは
Fix— 赤い(f)表示。 Ctrl+ドラッグ・Alt+ドラッグでSmartMatesを活用 — 円筒同士はConcentric+Coincidentが自動。- Mate Controller: 複数Mate値をスライダーで同時に調整し、Configuration化も可能。
ヒント: 頻繁に再利用する部品にはMate Referenceを仕込んでおく。ボルトを穴の上にドラッグするとConcentric+Coincidentが自動適用され、組立が高速化する。
2. Sub-Assemblyの構造
- 実際の製造・組立単位でSub-Assemblyを構成するとBOMの「単位別納品」と自然に一致する。
- Rigid Sub-Assembly(既定): サブは剛体扱い。内部Mateはサブ編集モードでのみ動作。
- Flexible Sub-Assembly: サブ内コンポーネントがメインのMateに反応して動く。便利だがパフォーマンス負荷が大きいので、本当に必要なときだけ。
注意: Virtual Component(名前が[]括弧で表示されるもの)はアセンブリファイル内部に一時保存されたパート。最終リリース前には必ずSave Partで独立ファイル化しないと、PDM・BOM管理ができない。
3. Exploded View・干渉チェック
3.1 Exploded View
Assembly → Exploded View。- 各コンポーネントを移動・回転させて分解状態を表現。
- Explode Line Sketch(3D Sketchライン)で分解経路を表記。
- Animate Explode → Motion Studyに自動記録 → AVI/MP4出力。
- 図面でExploded Viewを取り込み、BOM・Balloonと連動可能。 → 詳細な図面作業: /cad-tips/solidworks/drawing
3.2 Interference Detection
Evaluate → Interference Detection。- 全体または選択ペア間の干渉を計算。
- オプション: Include multibody parts, Ignore hidden bodies, Treat subassembly as components。
- Clearance Verificationで最小離隔距離も併せて検証。
ヒント: 大型アセンブリでは選択した2コンポーネントだけを検査すると、全体検査の1/100の時間で済む。問題区域だけ集中点検するやり方を基本にする。
4. Top-Down Design (In-Context)
- アセンブリ内部で新しいパートを生成し、他パートの形状を参照する方式。
- Skeleton(マスターモデル)方式が最も安定: 共有スケッチ・基準面・曲線だけを含む骨格パート1つを作り、残りのパートがそのファイルを参照する。
- External Referenceが発生するとツリーに
->記号が付く。
注意: In-Context Referenceはファイル名やパスが変わると簡単に壊れる。PDMがない環境ではSkeleton方式を推奨する。
5. Pattern・Mirror・Assembly Features
- Component Linear/Circular/Feature-Driven Pattern: コンポーネント自体を複製。
- Mirror Components: 左右対称部品を生成。"Opposite Hand(反対勝手)"バージョンのファイルとして保存可能。
- Assembly Features: Cut-Extrude, Hole, Filletをアセンブリレベルで実行。組立後加工の表現に適しており、パートファイルには影響しない。
- Envelope: 参照用コンポーネント。BOM・干渉チェックから除外。設置空間の限界表現に有用。
6. Configuration — 1ファイル、複数バリエーション
6.1 概念
- パート/アセンブリ1つに、サイズ・フィーチャー有無・材料などのバリエーションをまとめて保存。
- ConfigurationManagerタブ(FeatureManagerの隣)で管理。
- 各Configurationは独立して図面・BOMに参加可能。
6.2 制御可能なパラメータ
| 対象 | パラメータ |
|---|---|
| パート | Dimensions, Feature Suppression, Sketch Relations, Equations, Custom Properties, Material, Appearance, Color |
| アセンブリ | Component Suppression, Fix/Float, Mate Values, Mate Suppression, Hole Wizard Size, Display States, Envelope Status |
6.3 Design Table (Excelベース)
Insert → Tables → Design Table。3つの生成オプションがある。
- Blank: 空表 → 手動入力。
- Auto-create: 既存Configurationの値を自動記入。
- From File: 外部Excelファイルとリンク。
列ヘッダーのルール:
$CONFIGURATION@— Configuration名(必須の先頭列)。D1@Sketch1— 寸法名@フィーチャー名。$STATE@Fillet1— Suppressed / Unsuppressed。$COLOR@Part— RGB。$COMMENT,$PRP@Description— メモ、カスタムプロパティ。
ヒント: Edit Table in New Windowで開くとExcelのフル画面で編集可能。数十個のConfigurationを一括修正するときに必須。
6.4 Display States
- 同一Configuration内で視覚的表現のみを変える(可視性、色、透明度)。
- 設計中間レビュー用の"X-Ray View"を作る際に有用。
6.5 Configurationのベストプラクティス
- Configuration数は最小限に。多すぎるとDesign Tableの保守が負担になる。
- サイズバリエーションはDesign Table、機能的バリエーション(フィーチャー有無)は手動生成がスッキリ。
- Default Configurationは常に基本形・中間サイズにする。
- 派生(Derived) Configurationを活用 — 親の値を継承し、変更分のみオーバーライド。
- BOMでConfigurationごとに異なるPart Numberを使いたい場合は、
Part Number displayed when used in BOM設定が必要。
7. パフォーマンス最適化 — 大型アセンブリ戦略
7.1 Lightweight
- コンポーネントのグラフィックトライアングルのみ読み込み、完全なモデルデータは省略。
- 起動速度2~3倍、メモリ50%節約。
- 必要時に右クリック →
Set Lightweight to Resolved。
ヒント: OpenダイアログでMode: Lightweightを既定にしておき、編集する部品だけResolveする習慣が最も効率的。
7.2 SpeedPak
- アセンブリの選択した面・ボディのみ保持した軽量Configuration。
- メモリ最大90%節約。
- 編集不可で、Mateは含まれる面にしかかけられない。
作成手順: ConfigurationManager → 既存Configurationを右クリック → Add SpeedPak → 残す面/ボディを選択。
ヒント: 協力会社に配布するアセンブリはSpeedPakで出すと、社内の知的財産を保護しつつファイルサイズも削減できる。
7.3 Large Assembly Mode
Tools → Options → Assemblies → Large Assembly Mode Threshold(既定500)。しきい値を超えると自動で以下が無効化される。
- 図面切り替えの遮断
- 自動保存の遮断
- 影・反射Off
- Dynamic Highlighting Off
- Feature Statistics Off
7.4 追加のパフォーマンスヒント
- Hideは視覚のみ、Suppressは計算まで省略。使わない部品はSuppress。
- Defeatureコマンドで外部共有用の単純化モデルを生成。
- Large Design Review (LDR): 純粋なレビュー用の超軽量モード。Mate・修正は不可。
- Freeze Barで特定フィーチャー以前を"凍結"してリビルド対象から除外。
Verification on Rebuildは既定Offのまま。ONにすると精度は上がるが10倍遅くなる。- Temporary Axes・Reference Geometryを非表示にして視覚ノイズを削減。
- RealView / Shadows / Ambient Occlusionは作業中Off、スクリーンショット時のみOn。
- 32GB RAM / NVMe SSD / NVIDIA Quadro・RTXを推奨。
7.5 ファイル保存の最適化
- Ctrl+QでForce Rebuild後に保存 → 次回起動時のリビルドをスキップ。
Include Display Dataオプションは保存時にグラフィックキャッシュを含める → 起動は速くなるがファイルが~10%大きくなる。- Mate Referencesキャッシュを活用 — 他ファイルでのMate適用が速くなる。
8. アセンブリのベストプラクティスまとめ
- 最初のコンポーネントは原点にFix。
- Sub-Assemblyで実際の製造・工程・納品単位を反映。
- Flexible Sub-Assemblyは本当に必要な時だけ。
- Mate Referenceで繰り返しMateを自動化。
- Design LibraryのSmartComponentsで自動Cut-Extrude(ボルト穴など)を適用。
- 大型アセンブリはLightweight → SpeedPak → LDRの3段階で段階的に軽量化。
- In-Contextより Skeleton方式を優先。
実務チェックリスト
- 最初のコンポーネントを原点にFix
- 平面-平面Mateを中心に構成
- Mate数を最小化・不要Mateを除去
- Sub-Assembly単位が実際の製造単位と一致
- Virtual Componentはリリース前にSave Partで分離
- Configuration数を管理可能な水準に制限
- Design Tableの列ヘッダー規則を遵守
- Large Assembly Modeのしきい値を運用規模に合わせて調整
- 協力会社共有用のSpeedPak Configurationを準備
- 干渉チェックは選択ペア中心に集中実行