Autodesk Inventor パート・サーフェスモデリング
概要
Inventorで単一部品(.ipt)は2D/3Dスケッチ → Solid Feature → Surface Featureの順に積み上げられる。
本ページはスケッチ原則からExtrude/Revolve/Sweep/Loft/Coil/Emboss、主要Modifyコマンド、そしてBoundary Patch/Sculpt/Thicken中心のサーフェスワークフローまで実務観点で整理する。
1. 2Dスケッチ原則
メニュー経路: 3D Model → Sketch → Start 2D Sketchまたは平面選択後ショートカットS。
Inventorのスケッチは先に拘束、後から寸法化という原則に従う。五つの習慣でほとんどのリモデリング苦痛を回避できる。
- Constraintを先に、Dimensionは後にかける。形状を安定させてからサイズを決める。
- Fully Constrained状態を維持する。自由度(DOF)グリフが消えるまで粘る。
- 一つのスケッチに詰め込みすぎない。12個のFeatureを一つのスケッチで作らず、Base + 派生Featureに分ける。
- スケッチ段階でFillet/Chamferを入れない。ラウンド処理はFeatureレベル(F, CH)で適用する。
- Origin平面・軸・点を積極的に参照する。対称形状はOrigin中心線基準で描けばMirror・Patternが楽になる。
ヒント: 自動拘束(Inferred Constraint)が邪魔なときはCtrlを押した状態で描けば一時的に無効化される。意図しない水平/垂直拘束を避けるのに便利。
2. 主要スケッチ拘束
| 拘束 | 説明 | 適用のコツ |
|---|---|---|
| Coincident | 点-点 / 点-線一致 | 最も基本。自動適用が失敗したら手動で再度かける |
| Collinear | 二つの線が同じ直線上 | つながった形状に使用 |
| Parallel / Perpendicular | 平行 / 直角 | 方向維持が必要なあらゆる場所 |
| Tangent | 接線 | 円・弧と直線をつなぐときに必須 |
| Concentric / Equal | 同心 / 同サイズ | 繰り返される円・線はEqualでまとめ、寸法は一つだけ |
| Horizontal / Vertical | 水平 / 垂直 | 自動推論されるが明示的にかけておくと堅固 |
| Symmetric | 対称 | 中心線基準の対称形に必須。寸法は半分だけでもよい |
| Fix | 固定 | 乱発禁止。動いてはいけない点一つ二つだけに |
ヒント: かかっている拘束を一目で見るにはCtrl+Shift+Cまたはスケッチパネルの"Show All Constraints"を使う。アイコンにカーソルを合わせるとどの要素間の拘束かハイライトされる。
3. 寸法と数式
D(General Dimension) 一つで水平/垂直/半径/直径/角度を選択要素に応じて自動切替する。- 寸法入力欄に数値の代わりに
=d0*2,=Length/2のように数式を入れられる。 - すでに完全拘束されたスケッチに寸法を追加するとDriven Dimension(括弧表記)として入る。結果のみ表示しモデルを駆動しない。
注意: Driven Dimensionが自動提案されるということはスケッチが過剰拘束のサインだ。既存寸法・拘束から再検討しよう。
4. Project Geometry & 3D Sketch
- Project Geometry: 他Bodyのエッジ、他スケッチライン、Origin軸を現在のスケッチへ投影する。元が変わると自動連動して設計意図が維持される。
- Project Cut Edges: スケッチ平面がBodyを切る断面線を投影。断面ベース作業の基本。
- 3D Sketch: チューブ・配線・空間経路設計に使う。Include Geometry・Bend(コーナー半径)・Work Point座標入力が中核ツール。
ヒント: 3D Sketchは2D Sketchよりソルバー負担が大きい。平面形状は必ず2Dで、空間経路のときだけ3Dで描く。
5. Base Feature選択
メニュー経路: 3D Model → Create。どのFeatureで始めるかがタイムライン全体の性格を決める。
Extrude (E)
- End Condition: Distance / Through All / To / To Next / Between
- 方向: 単方向, Symmetric, Asymmetric
- Boolean: Join / Cut / Intersect / New Solid
ヒント: 同じスケッチで複数のExtrudeが必要ならブラウザでShare Sketchをオンにする。ただし共有スケッチは管理が難しくなるので本当に必要な場合のみ。
Revolve (R)
軸 + 角度の組み合わせ。Full 360°がデフォルトで、軸はスケッチライン、Origin軸、モデルエッジのいずれでも可。
注意: プロファイルが軸と交差するとエラーになる。交差なく接するか完全に離れていなければならない。
Sweep
経路(Path) + プロファイル(Profile)の組み合わせ。Autodesk公式ブログが「ほぼすべての形状はスイープだ」と宣言するほど強力。
- Path: 2D/3D Sketch, Body Edge
- Profile: Path始点に垂直な2Dスケッチ推奨
- Orientation: Path / Parallel / Guide
- Taper, Twistオプションで断面変化・ねじれ表現
ヒント: ProfileスケッチにPierce ConstraintをかけてPathに「貫通させて」おくと、Pathを修正してもプロファイルが自動追従する。
Loft
2つ以上の断面をつなぐ遷移形状。ホッパー、ハンドル、ブレンド形状に使う。
- Rails: 側面ガイド曲線
- Center Line: 中心線に垂直な断面を維持
- Conditions: 始点/終点接線条件(Free / Tangent / Smooth G2 / Direction)
- Closed Loop: 始点と終点をつないで閉じた形状
注意: 断面数が少なく形状差が大きいとねじれが発生する。中間断面を追加するかRailsを使って安定化させる。
Coil
螺旋・スプリング・ねじ山生成。
- Type: Pitch & Revolution / Revolution & Height / Pitch & Height / Spiral
- Rotation: 左・右方向
- Start/End: Natural / Flat (スプリング座面加工)
- Taper: 円錐形スプリング
ヒント: ねじ山はCoilで実際の螺旋を作らない。質量が不正確になり図面・レンダリングが遅くなる。Modify → Threadで視覚的なねじ山のみ表示するのが標準。
Emboss
テキスト・ロゴ・パターンを面に凸または凹させる。
- Emboss from Face / Engrave from Face / Emboss/Engrave from Plane
- Wrap to Face: 曲面ラッピング(Inventor Professional専用)
6. Modifyコマンド
Fillet (F)
- Constant / Variable Radius
- Setbacks: 三つのEdgeが交わるコーナー処理
- Full Round: 三つの隣接面に内接する半径
- Rolling Ball: 交差部Blend
- Edge Selection: Loop / Feature / All Fillets / All Rounds
ヒント: フィレットはタイムラインの終盤に集めておく。Suppressが簡単でDrawing速度が速くなる。初期設計段階では全Filletをサスペンドした状態で作業する方が楽。
Chamfer (CH)
- Distance: 等分面取り
- Distance & Angle: 距離 + 角度
- Two Distances: 非対称面取り
Shell (SH)
- Remove Face: 開ける面選択(未選択時は全体内部空洞)
- Thickness: 基本厚さ
- Unique Face Thickness: 面別独立厚さ
- 方向: Inside / Outside / Both
注意: Shellはタイムライン位置に敏感。Filletの前に置くとエッジが丸く巻き込まれ、後に置くと鋭く維持される。意図に合わせて配置する。
その他よく使うFeature
- Rib: 薄い補強リブ(鋳造・プラスチック)
- Thread: 視覚的ねじ山
- Draft: 抜き勾配(射出・鋳造必須)
- Split: Bodyを面/平面で分割
- Derive: 他のIPT/IAMを参照して派生パート生成(溶接前/後分離管理に有用)
7. サーフェスモデリングワークフロー
家電外装、消費財ハウジング、航空・自動車外板、複雑なブレンドに使用する。
Inventorは専用サーフェスCAD(Alias・Rhino)ほど豊富ではないが、機械設計に伴う程度の曲面は十分に処理する。
サーフェス作成基本
Extrude / Revolve / Sweep / LoftのOutputを「Surface」に変えればSolidの代わりに厚みのないシートが作られる。
これらのシートをBoundary Patchで埋めてStitchで縫い合わせ閉じたQuiltを作り、SculptやThickenでSolid化するのが基本フロー。
Boundary Patch
メニュー経路: 3D Model → Surface → Boundary Patch。
閉じた境界(2D Sketch, Body Edge, Surface Edgeの組み合わせ)内に面を生成する。
- Edge Conditions: G0(Contact) / G1(Tangent) / G2(Smooth, 曲率連続)
- Weight: 0~1の間で隣接面の影響度調整
- Guide Rail: 内部を通るガイド曲線でパッチ形状を制御
ヒント: Stitch前のBoundary PatchはG1またはG2に設定する。G0で残すとエッジが角張り、光沢ビューですぐに見分けがつく。
Stitch
メニュー経路: Surface → Stitch。エッジが接する複数のSurfaceを一つのQuiltに結合する。
- Tolerance: 基本モデル公差。エッジ間隙がこれより小さければ接合される
- Preview Failed Edges: 失敗したエッジを強調(デバッグに必須)
- 完全に閉じたQuiltはSolidへ自動変換オプションが表示される
注意: 曲率が連続しない面同士を無理にStitchするとSculpt/Shell/Thicken段階で失敗する。つなぐ前に境界条件を合わせる。
Sculpt
メニュー経路: Surface → Sculpt。閉じたSurface集合からSolidを作るか、既存Solidから不要領域を削除する。
- Direction: Add / Subtract / Intersect
- Face List: 領域を定義する面。Solid Bodyの面も混在可
Thicken / Offset
メニュー経路: Modify → Thicken/Offset。
- Thicken: Surfaceに厚みを与えてSolid生成
- Offset: 一定距離離れたSurface生成
- Distanceを負数にすると反対方向
その他サーフェスツール
- Replace Face: Solidの一面をSurfaceで置換
- Delete Face: Solidから面を削除してSurfaceのみ残す(簡略化)
- Extend Surface: Surface境界拡張
- Ruled Surface: Edgeから一定角度で伸びる面生成(Draft分析用)
ヒント: Sculptが失敗したら(1)全SurfaceがStitchされClosed Quiltか、(2)Self-Intersectionがないか、(3)Toleranceが厳しすぎないかの順で点検する。
8. モデリング順序ベストプラクティス
Feature順序は後の修正利便性とDrawingパフォーマンスを決める。
- 最大の形状がBase Feature。通常は大きなExtrudeまたはRevolve。
- 次に主要構造Feature(貫通穴、大きな溝、補強)。
- Patternは原本一つを完全に決めてから生成する。
- Fillet/Chamferは最後。Suppress・修正がはるかに楽になる。
→ 詳細: /cad-tips/inventor/sheetmetal-frame (Sheet Metal専用Feature) → 詳細: /cad-tips/inventor/assembly-content (組立段階のAdaptive)
実務チェックリスト
- スケッチがFully Constrained状態で閉じている (DOF = 0)
- Fillet/Chamferはタイムライン終盤に集中し、初期設計ではSuppress可能
- 大きなSweep/LoftにPierce/Guide Railなどの安定化拘束をかけた
- Parameter名を意味のあるものにして数式管理が可能 (
d0禁止) - サーフェスモデルはStitch前にG1/G2で境界を合わせた
- Closed Quilt → Sculpt段階でSelf-Intersectionがない
- ねじ山は実際の螺旋ではなくThread Featureで表示した
- Deriveを活用して溶接前/後、加工前/後のような派生パート管理体系を築いた