SolidWorks 板金(Sheet Metal)・溶接構造物(Weldments)・Surface・Toolbox
概要
ソリッドモデリングとは別に、板金・溶接・サーフェスはそれぞれ独自のワークフローと思考法を持つ。板金は曲げと展開図、溶接構造物はフレーム経路とCut List、サーフェスは自由曲面とインポートファイル修復に特化している。共通するのは「最初からそのモードで始めなければならない」という点。ソリッドで適当に作ってから板金に変換したり、サーフェスをソリッドに貼り合わせるアプローチは、最終的には展開図・溶接ビード・Knitエラーとして跳ね返ってくる。本書はBase Flange/Edge Flange/Miter/Hem/Jog/Forming Tool/Flat Pattern、Structural Member/Gusset/End Cap/Weld Bead/Cut List、Boundary/Filled/Knit/Trim/Thicken、そしてToolbox・Hole Wizardの実務運用を整理する。パートモデリングの基礎は02-part-modeling.mdを参考のこと。
1. Sheet Metal — 板金設計
1.1 板金設計の原則
板金パートのキモは厚さ・曲げ半径・K-Factorが自動連動し、最終的にFlat Pattern(展開図)が正確に抽出される点。
- 材料厚さ: 最初のBase Flangeで決まるとパート全体に同じ厚さが適用される。1つのパートに異なる厚さを混ぜるMulti-Thicknessは複雑度が急増するので可能な限り避ける。
- 曲げ内半径: 材料・厚さ別の最小値を守ること。例えば3mm以下の冷延鋼板で内半径0.76mm(0.030インチ)が業界慣例。これより小さいとクラックが生じるか、プレス金型の寿命が縮む。
- K-Factor: 中立面位置の比率で展開長を決定する。日本の現場では0.33~0.50の範囲で材料別にシートを補正する。既定は0.5を使いつつ、精密板金は工場の実測テスト後に値を固定する。
注意: ソリッドで作ってからInsert → Sheet Metal → Convert to Sheet Metalへ回す方法は、形状が単純なときにしか通用しない。複雑なフランジ構造はBase Flangeから始めるほうが安全。
1.2 主要Sheet Metalフィーチャー
| フィーチャー | 役割 |
|---|---|
| Base Flange / Tab | 板金の出発点。2D閉スケッチに厚さを与えるとSheet-MetalとFlat-Patternヒストリーが自動追加される。 |
| Edge Flange | 既存エッジに垂直フランジを追加。End Condition, Position(Material Inside/Outsideなど)を指定。 |
| Miter Flange | 複数エッジに一度で連続フランジ。箱型板金・ケース製作に有用。 |
| Hem | エッジを折り返して二重化。Open / Closed / Tear Drop / Rolled。安全・剛性目的。 |
| Jog | 1フィーチャーで2回曲げて段差オフセットフランジを作る。 |
| Sketched Bend | 平面スケッチの直線に沿って曲げる。 |
| Corner/Bend Relief | 曲げ角の応力集中を防ぐリリーフ。Rectangular / Tear / Obround。 |
| Forming Tool | ルーバー・エンボス・リブなどのスタンピングフィーチャー。Design Libraryからドラッグ&ドロップ。 |
| Unfold / Fold | 特定曲げだけ一時的に展開し、フラット状態でCut-Extrudeを適用 → 再びFold。 |
| Flat Pattern | 全体展開図。Flattenトグルで即確認、図面にBend Line・Bend Noteを含めることも可能。 |
メニュー経路例: Insert → Sheet Metal → Edge Flange。
ヒント: Cut-Extrudeを板金パートに適用する際は、PropertyManagerの Normal Cut にチェックを入れる。曲げ面を横断するカットがフラット状態で材料厚み方向に垂直に表現され、レーザー加工基準と一致する。
1.3 Gauge Table
工場が実際に使用する厚さ・曲げ半径・K-FactorをExcelにまとめ、.xlsxのゲージテーブルとしてSolidWorksに登録する。
- パス指定:
Tools → Options → System Options → File Locations → Sheet Metal Gauge Table Folder。 - Base Flange生成時にドロップダウンからゲージ項目を選ぶと厚さ・半径・K-Factorが一括反映される。
ヒント: 工場別・材料別にゲージテーブルを分けて管理すれば、同じ部品を別の外注先に発注する際にテーブルの切替だけで展開長が再計算される。
1.4 板金のベストプラクティス
- 1パート=1厚さが基本。Multi-Thicknessは例外的な状況のみ。
- 端・穴までの距離 ≥ 2.5 × 厚さ。
- 穴-穴距離 ≥ 2 × 厚さ。
- 曲げ線-穴距離 ≥ 2.5 × 厚さ + 曲げ半径。これより近いと曲げ時に穴がひずむ。
- Flat Patternビューを図面に必ず1つ配置。組立図用の立体ビューとは別に展開図を用意しないとレーザーカットに使えない。
- Cut Listで材料・厚さ・展開面積を自動集計し、BOMに連携。
2. Weldments — 溶接構造物
2.1 基本フロー
- 3D Sketchまたは複数の2D Sketchを組み合わせてフレーム経路を描く。
- Structural Memberフィーチャーでプロファイル(角パイプ・丸棒・H型鋼など)を経路に適用。
- Trim/Extendで交差部を整理。
- 必要な位置にGusset(補強板)、End Cap(エンドプレート)、Weld Bead(溶接ビード)を入れる。
- Cut Listが自動生成され、BOM・図面自動化の根拠となる。
メニュー経路: Insert → Weldments → Structural Member。
2.2 Structural Member活用のヒント
- 対応標準: ANSI, ISO, KS, JIS, GB, DIN。
- タイプ: Square Tube, Rectangular Tube, Pipe, C-Channel, Angle(L), I-Beamなど。
- Apply Corner Treatmentオプション: 交差部の自動整理。End Miter, End Butt1, End Butt2から選択。
- 1回のStructural Memberフィーチャーには同一プロファイルのみ適用する。プロファイルが混ざる場合は別フィーチャーに分割する。
ヒント: プロファイルライブラリは<インストールパス>\lang\<言語>\weldment profilesに置かれる。アルミプロファイル(Bosch Rexroth, Item, Misumiなど)の規格を追加しておくとフレーム設計速度が大きく上がる。
ヒント: JIS G 3466のような国内規格プロファイルは3DContentCentral, Misumi, Bosch Rexrothサイトから.sldlfpを直接ダウンロード可能。
2.3 Trim/Extend・Gusset・End Cap・Weld Bead
- Trim/Extend: Structural Member交差部の整理。Trimming BoundaryをFace/Plane/Bodyから選択。Weld Gapオプションで溶接ギャップを確保。
- Gusset: 2部材間のV型補強板。Polygonal / Triangular形状、厚さを指定。
- End Cap: 開放プロファイル端の平面蓋板。厚さとオフセットを指定。
- Weld Bead: 面-面間の溶接ビード。Fillet Weld / Butt Weld。2011以降のCosmetic Weld Beadは実際のソリッドの代わりにグラフィックだけで表現しつつ、Cut Listには長さが集計される(ファイル容量節約)。
2.4 Cut List — BOM自動化
各Structural Memberボディは自動でCut List Itemにグループ化される。Cut ListプロパティにはLength, Angle1, Angle2, Total Length, Description, Material, Quantityが既定で含まれ、塗装コードや表面処理などのカスタムプロパティを追加可能。
図面への挿入: Insert → Tables → Weldment Cut List → 駆動ビュー選択 → 位置指定。
ヒント: Cut List書式は.sldwldtbtで保存して新規図面で再利用する。
ヒント: 複数のStructural Memberをまとめて右クリック → Create Sub-weldment。組立単位ごとにCut Listが分離され、溶接工程順を整理しやすくなる。
3. Surfaceモデリング
3.1 なぜサーフェスか
自由曲面(自動車外装、家電外観、ボトル、ハンドピースなど)はソリッドフィーチャーだけでは表現しにくい。また協力会社から受け取ったSTEP/IGESが欠損面や自己干渉のためソリッド変換に失敗する場合、サーフェスツールでファイルを修復する必要がある。サーフェスボディは厚みが0なので、最終的にはKnit(縫い合わせ) → ソリッド化あるいはThicken(厚み付与) で仕上げる。
3.2 主要サーフェスコマンド
| コマンド | 用途 |
|---|---|
| Extruded/Revolved/Swept/Lofted Surface | ソリッド対応フィーチャーのサーフェス版。 |
| Boundary Surface | 4辺曲線網で面を生成。双方向の連続性(Tangent/Curvature)を制御。 |
| Filled Surface | 閉じた境界の内部をパッチで埋める。 |
| Planar Surface | 閉じた2Dスケッチ → 平面。 |
| Offset Surface | 既存面から一定距離のオフセット。距離0で面抽出にも使用。 |
| Ruled Surface | エッジから一定方向/角度で拡張。 |
| Knit Surface | 複数面を1つのSurface Bodyに縫い合わせる。 |
| Trim / Untrim Surface | ツール面でカット / トリム解除。 |
| Delete Face | 面削除。Delete and Patch / Delete and Fillオプションで自動パッチ。 |
| Extend Surface | 面を延長。 |
| Thicken | 面に厚みを付与してソリッド化。 |
3.3 サーフェスのベストプラクティス
- Knitは段階的に。一度に全面を縫い合わせるとエラー原因を特定しづらいので、2~3枚ずつ積み上げる。
- Check Entity(
Tools → Check): オープンエッジ、最小曲率半径、短いエッジ、自己干渉を診断。 - Construction Surfaceは参照用に留め、最終ボディと混ぜない。
- Filled SurfaceのBoundary ConditionをTangent以上にすると滑らかなブレンドになる。
- Boundary Surfaceは4辺曲線網を要求し、Loftより結果がきれい。単純なプロファイル接続はLoft、双方向の連続性が必要なブレンドはBoundary。
3.4 Surface ↔ Solidの相互変換
- ソリッド → サーフェス: Offset Surface距離0、またはDelete FaceでDelete and Patchを解除。
- サーフェス → ソリッド:
- すべての面をKnitして閉じた体積になれば自動でソリッド化。
- Thickenで片側または両側に厚みを付与。
- KnitフィーチャーのTry to form solidオプションをチェック。
3.5 インポートファイル修復
STEP/IGESインポート後にソリッド変換が失敗した場合、次の順で対応する。
Import Diagnostics自動実行 — Face Problems / Gap Problemsの自動修正を試みる。- 手動修復: Fill Surfaceで欠損面をパッチ → Knit → Thicken。
- FeatureWorksアドインでフィーチャー認識を試みる — 修正可能なヒストリーツリーが再構築される(複雑形状は成功率が低い)。
注意: インポートファイルは単位誤差(mm vs inch)、座標原点の違い、Toleranceが自社標準と異なる。変換後は計測(主要寸法)で検証することから始める。
4. Toolbox — 標準部品ライブラリ
4.1 Toolboxの基本動作
ToolboxはANSI/ISO/KS/JIS/DIN/GB標準に準拠したボルト・ナット・ワッシャー・ベアリング・キー・ギヤをドラッグ&ドロップで挿入するライブラリ。SolidWorks Professional以上に含まれる。
4.2 Toolbox部品管理オプション
| オプション | 説明 | 適合環境 |
|---|---|---|
| Create Parts | 使用するたびに新規ファイル生成 | PDM環境(個別ファイルでRevision管理可能) |
| Create Configurations | 1ファイルに複数Configuration | 小規模チーム・個人作業 |
注意: PDMがあるのにCreate Configurationsで運用すると、複数ユーザーが同一ファイルのConfigurationを同時編集してVersion競合が頻発する。PDM環境ではCreate Partsを推奨。
4.3 Toolboxカスタマイズのベストプラクティス
- ネットワークパスにToolboxをインストールし、全エンジニアが同一ライブラリを参照する。
- 初期インストール直後にフォルダまるごとバックアップ。誤編集すると元に戻すのが難しい。
- Custom Standard作成: 元のANSI/ISOをコピーして
Company_Standardに分岐する。元は絶対に触らない。 - よく使うサイズだけ残してUIを単純化 → 選択ミスを低減。
- Password保護で社内標準の改ざんを防ぐ。ただしパスワード紛失時は復旧不可。
- インストールフォルダ名に年度を付ける(
SOLIDWORKS Data 2024)。バージョンアップ時の衝突防止。
4.4 Toolboxファイル障害の復旧
Toolbox Settings → Database Upgradeで自動復旧。swBrowser.sldedb破損時はバックアップから復元。- 最新Toolboxのインストールが既存ファイルパスと衝突する場合は削除後に再インストール。
5. Hole Wizard
5.1 概要
メニュー経路: Features → Hole Wizard。標準穴を規格通り生成し、Hole Calloutと自動連動する。
対応タイプ: Counterbore, Countersink, Hole, Straight Tap, Tapered Tap, Legacy Hole, Counterbore Slot, Counterbore Countersink Slot, Slot。
5.2 ベストプラクティス
- 穴位置は2D Sketch点で指定するのが最も編集性が高い。Center Markを配置 → Smart Dimension。
- Advanced Hole: 1つの穴が層ごとに異なる直径・深さを持つ場合に使用(例: 上部カウンターボア + 下部タップ)。
- カスタム標準が必要ならHole Wizard Standardを会社基準で修正してToolboxと一緒にネットワーク配布。
ヒント: Hole Wizardの穴は図面Hole Calloutと1:1で連動するので、可能な限りすべての穴をHole Wizardで作るほうが長期的に図面品質を上げる。Legacy Holeや通常のCut-Extrude穴はHole Calloutの正確性が落ちる。
実務チェックリスト
- 板金パートはBase Flangeで始めたか
- 材料厚・曲げ半径・K-Factorが工場実測値と一致するか
- Gauge Tableが工場別に登録されているか
- 曲げ線-穴間距離が最小ルールを満たすか
- Flat Pattern図面ビューが含まれているか
- Cut-ExtrudeにNormal Cutオプションが適用されているか
- 溶接構造物の経路スケッチが可能な2Dに分離されているか
- Structural Member Corner Treatmentが生成時に指定されているか
- Cut Listプロパティ(Length/Angle/Material)が埋まっているか
- サーフェスKnit後にオープンエッジをCheck Entityで確認したか
- インポートファイルはImport Diagnostics通過後、主要寸法を再検証したか
- Toolboxはネットワークパスにあり、バックアップがあるか
- Hole Wizardで作った穴とLegacy Holeが混在していないか