SUS304なのになぜ錆びる? - ステンレス鋼の腐食トラップ5選

異種金属接触腐食(ガルバニック)、塩素イオン環境(SCC)、溶接熱影響部の鋭敏化、すき間腐食、不動態皮膜破壊などステンレス鋼の代表的腐食原因と対策

「ステンレス=錆びない」というのは現場での大誤解だ。JIS G 4303(SUS304等)のステンレス鋼は「錆びにくい」だけで、Cl⁻濃度・温度・応力・異種金属接触が揃うと普通鋼より深刻な腐食を起こす。食品工場の洗浄ラインのようなCl⁻環境では、SUS304配管にSCC(応力腐食割れ)が発生して短期間で配管交換に至るケースもある。Cl⁻濃度が25 ppmを超える場合はSUS316Lにグレードアップすべき条件だ。

異種金属接触腐食(ガルバニック腐食)

SUS304部品にSS400ボルトを使ったり、SUS板を炭素鋼フレームに直接置くと電位差で卑側が急速腐食。電位差0.25 V超は危険域。

  • 対策:絶縁ワッシャー・スリーブ、同系SUSボルトを使用、エポキシコート。

塩素イオン応力腐食割れ(Cl⁻ SCC)

プール・海岸・洗浄ラインなどCl⁻環境では、SUS304は引張応力部で粒界割れが進む。60°C超、Cl⁻ 25 ppm超で危険域。

  • 対策:SUS316L(Mo 2%)へグレードアップ、応力除去焼鈍。耐孔食指数「PRE値」を選定の目安にする。

溶接熱影響部の鋭敏化

SUS304溶接時、HAZ(500〜850°C)でCr₂₃C₆が析出してCr濃度が12%以下に下がり、不動態皮膜が形成できず粒界腐食。

  • 対策:SUS304L(C ≤ 0.03%)使用、溶接後の固溶化熱処理(1050°C急冷)、入熱最小化。日本溶接協会のWES資料に詳細あり。

すき間腐食(クレビス腐食)

ガスケット面・重ね継手・ワッシャー下の0.025〜0.1 mmの隙間が最も危険。酸素消費→局所pH低下→皮膜破壊。

  • 対策:突合せ溶接、シーラント充填、排水勾配。各シールメーカーのガスケット選定資料には対策事例が豊富に掲載されている。

不動態皮膜の機械的破壊(鉄粉汚染)

炭素鋼用ワイヤーブラシでSUSを擦ったり、同じ保管台に置くと鉄粉がSUS表面に埋め込まれて孔食の起点に。

  • 対策:SUS専用工具を色分け管理、酸洗パッシベーション(硝酸10〜20%、50°C、30分)、電解研磨。半導体製造装置では電解研磨(EP)が必須仕様。
💡 材質選定の指針
「とりあえずSUS304」は材質選定で最も危険な習慣だ。Cl⁻、温度、応力、異種接触——4条件を必ずチェックし、必要に応じてSUS316L、SUS316L+EP、二相系へグレードアップを検討する。各鉄鋼メーカーの選定資料は条件別の指針が整理されているので、設計時に参照しておきたい。
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