公差が積み重なると組めない - 公差積み重ね実践計算

最悪値法(Worst Case)とRSS法の比較、公差積み重ね計算例、設計マージン確保法

公差積み重ね(Tolerance Stackup)は、図面上はJIS B 0405(普通公差)の範囲内なのに「組み立てたら入らない」という不具合に直結する。複数部品が直列に並ぶ機構では、個別公差の合計が想定以上に膨らみ、組立不良の主要因になりやすい。RSS法による再配分とGD&T指示の併用で、不良率は大きく下げられる。

最悪値法(Worst-Case)— 100%組立保証だがコスト高

  • 合計 = Σ|個別公差|
  • 例:5部品 ×±0.05 mm → 合計 ±0.25 mm
  • 適用:医療機器(PMDA基準)、航空宇宙、原子力など100%組立必須分野

RSS法(Root Sum Square)— 統計的に現実的

  • 合計 = √(t₁² + t₂² + … + tₙ²)
  • 同じ5部品 → √(5 × 0.05²) = ±0.112 mm(最悪値の約45%)
  • 適用:一般機械、自動車、家電。3σ基準で約0.27%の不適合率を許容。
  • 自動車業界の組立公差設計はRSSが主流で、Cpk 1.33以上の工程能力管理が前提となる。

積み重ね低減の設計戦略

  • 部品点数を減らす(5→3部品):積み重ね要因が直接減る。一体加工品(複合形状ブロック)への置き換えも有効。
  • データム共有:JIS B 0021相当のGD&T指示で、すべての部品が同一基準(共通データムA)を見るようにする。
  • 調整機構:最終組立にシムや調整ねじを設けて吸収。汎用流通のシムワッシャで対応できる。
  • 厳しい公差は機能寸法だけ:全寸法に±0.05を入れるのではなく、JIS B 0405の中級公差で十分な箇所は緩く。
💡 組立可能性検証の指針
組立図を受け取ったら最初に行うのは公差積み重ね計算だ。Excel 1枚で最小隙間と最大隙間を出し、最小がマイナスなら「その組立は理論上不可能」。個別部品の公差検査がOKでも、組立NGになる典型パターンが防げる。
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